母と息子の冒険

ハイデルベルクを経由して、シュツットガルトの西四〇キロにある、フォルツハイムの町に着いたのは夕方だった。

行程は約一〇〇キロである。

ベンツ第一号車の最高速は時速約一三キロと計測されているが、おそらくこの長距離ドライブの平均時速は一〇キロ弱と推定される。

これは、当時の最も進歩した駅馬車のスピード(時速九・五キロ)と同レベルである。

とにかくベルタと二人の息子は、史上初の自動車旅行者となった。

それはまさに、今の中古車トラックなどの輸送にかかわる自動車の登場するきっかけとなり、物流がさらに速くなる原動力となるのである。

またベルタはこれまた史上初めての女性ドライバーということになる(ただし、実際にはこの旅行でハンドルを握っていたのは、ほとんど一五歳の長男のオイゲンだったという)。

ベルタたちはフォルツハイムの祖母の家に行くつもりだったが、あまりにも疲れはてていたため、イスプリンゲン街の手近な旅館に泊ることにした。